「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」が平成21年6月24日に成立、7月1日に公布されました。

今回の改正の狙い

 少子化対策の観点から、緊急の課題となっている仕事と子育ての両立支援等を一層進めるために、両親ともに子育て等をしながら働き続けることができる雇用環境を整備する。

法改正の概要

    1.子育て期間中の働き方の見直し

    • 3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けることが事業主に義務化されます。
    • 労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化することが事業主に義務化されます。
    • 子の看護休暇制度を拡充する(小学校就学前の子が、一人であれば年5日(現行どおり)、2人以上であれば年10日)。

    2.父親も子育てができる働き方の実現

    • 父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2か月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を可能とする(パパ・ママ育休プラス)。
    • 父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した場合、再度、育児休業を取得可能とする。
    • 配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とすることができる制度を廃止する。

    3.仕事と介護の両立支援

    • 介護のための短期の休暇制度を創設する。(要介護状態の対象家族が、一人であれば年5日、2人以上であれば年10日)。

    4.実効性の確保

    • 苦情処理・紛争解決の援助及び調停の仕組みを創設する。
    • 勧告に従わない場合の公表制度及び報告を求めた場合に報告をせず、又は虚偽の報告をした者に対する過料を創設する。

    改正のポイントをまとめたブログ記事も参照ください。

     

    法改正の全体像

    改正前

      ikuji-old.gif

    yajirusi.gif

    改正後

    ikuji-new.GIF

    1.子育て期間中の働き方の見直し

    現状

    • 女性の育児休業取得率は約9割に達するものの、約7割が第1子出産を機に離職。
    • 仕事と子育ての両立が難しかった理由は、「体力がもたなそうだった」が最も多く、育児休業からの復帰後の働き方が課題。
    • 育児期の女性労働者のニーズは、短時間勤務、所定外労働の免除が高い。
    • 子が多いほど病気で仕事を休むニーズは高まるが、子の看護休暇の付与日数は、子の人数に関わらず年5日。

    改正内容

    (1)所定労働時間の短縮措置の義務化

    事業主は、その雇用する労働者のうち、その3歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないもの(1日の所定労働時間が短い労働者を除く。)について、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しながら、子を養育することを容易にするための措置(所定労働時間の短縮措置)を講じなければならないこととされます。

    (2)所定外労働の免除の義務化

    事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者であって、労働者がその子を養育するために請求した場合、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を越えて労働させてはならないこととされます。

    (3)子の看護休暇の拡充

    一の年度において5労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかったその子の世話又は疾病の予防を図るために必要なものとして定めるその子の世話を行うために休暇を取得できることとされます。 

    2.父親も子育てができる働き方の実現

    現状

    ○勤労者世帯の過半数が共働き世帯となっているなかで、女性だけでなく男性も子育てができ、親子で過ごす時間を持つことの環境作りがもとめられている。
    ○男性の約3割が育児休業を取りたいと考えているが、実際の取得率は1.56%。男性が子育てや家事に費やす時間も先進国中最低の水準。
    ○男性が子育てや家事に関わっておらず、その結果、女性に子育てや家事の負荷がかかりすぎていることが、女性の継続就業を困難にし、少子化の原因にもなっている。

    改正内容

    (1)父母ともに育児休業を取得する場合の休業可能期間の延長(パパ・ママ育休プラス)

    同一の子について配偶者が育児休業をする場合の特例が設けられます。
    配偶者が子の1歳到達日以前のいずれかの日において育児休業をしている場合、育児休業取得可能期間を、子が1歳に達する日までから1歳2ヶ月に達する日までに延長されます。
    父母一人ずつが取得できる休業期間の上限は、現行と同様1年間とする。
    父の場合、育児休業期間の上限は1年間。母の場合、産後休業期間と育児休業期間と合わせて1年間とされます。

    (2)出産後8週間以内の父親の育児休業取得の促進

    育児休業に係る子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に、労働者(その期間内に産後休業を取得した者を除きます。)がその子を養育するためにした最初の申出による育児休業をした場合、その育児休業を開始した日に養育していた子については、特別な事情がない場合でも再度の育児休業申出をすることができることとされます。

    (3)労使協定による専業主婦(夫)の除外規定の廃止

    労働者の配偶者でその育児休業申出に係る子の親が、常態としてその子を養育することができる者に該当する場合に、労使協定で定めた場合にその労働者からの育児休業申出を拒むことができる旨の規定を削除することとされます。 

    3.仕事と介護の両立支援

    現状

    ○家族の介護・看護のために離転職している労働者が、平成14年からの5年間で約50万人存在
    ○要介護者を日常的に介護する期間に、年休・欠勤等で対応している労働者も多い。

    改正内容

    (1)介護のための短期の休暇制度の創設

    要介護状態にある対象家族の介護その他の定める世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において5労働日(要介護状態にある対象家族が2人以上の場合にあっては、10労働日)を限度として、その世話を行うための休暇(介護休暇)を取得することができることとされました。

    事業主は、その事業主に引き続き雇用された期間が6か月に満たない労働者等のうち、労使協定で定められた労働者が申し出た場合を除き、介護休暇の申出を拒むことができないこととされました。

    事業主は、労働者が介護休暇の申出をし、又は介護休暇を取得したことを理由として、その労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととされました。 

    4.実効性の確保

    現状

    ○妊娠・出産に伴う紛争が調停制度の対象となっている一方で、育児休業の取得に伴う紛争はこうした制度の対象外。
    ○育児・介護休業法は法違反に対する制裁措置がなく、職員のねばり強い助言・指導等により実効性を確保している状況

    改正内容

    (1)紛争解決の援助及び調停の仕組み等の創設

    紛争解決の援助及び調停の仕組み等が創設されることとされます。

    (2)公表制度及び過料の創設

    勧告に従わない場合の公表制度や、報告を求めた際に虚偽の報告をした者等に対する過料を設ける。